ブロー方式の使い分けでコストダウンを実現
中子を製造する際、金型に砂を充填する方法の違いとしてトップブロー方式とサイドブロー方式に分かれます。
製造する中子の特性に合わせて最適なブロー方式を選択することによって、成型品質の安定化や生産性の向上など、様々なメリットがあります。
本事例では、ブロー方式の違いとどのように使い分けることでQCDの改善が見込めるかについて解説します。
トップブロー方式・サイドブロー方式とは
トップブロー方式は、金型の上から砂を充填する方法です。
金型の上から重力とエアー圧で砂を落とすように充填するため、砂の充填がスムーズで均一な成形がしやすく、中子製造において一般的な方式となります。
対してサイドブロー方式は、金型の横から横から砂を吹き込む方法です。
吹き込み方向が重力に対して垂直となるため、トップブロー方式に比べて砂の充填不良や偏り、詰まりが起こりやすくなります。
一方で、金型の構造がシンプルで入れ子を組み込みやすい点から、入り組んだ複雑形状の中子の製造に適しています。
(トップブロー方式の場合、入れ子が横向きになるため磁石などを用いて位置を固定する必要があります)
金型の製造においても、構造がシンプルなサイドブロー方式の方が金型を安価に製造できます。
比較項目 | トップブロー | サイドブロー |
---|---|---|
砂の吹き込み方向 | 上から | 横から |
向いている形状 | 縦長・単純 | 横長・複雑、側面開口部がある形状 |
充填の安定性 | 比較的安定している(重力と一致) | 偏りが出やすい(重力に対して垂直) |
金型の製造コスト | 複雑な形状になるほど高くなりやすい | 複雑な形状でも価格を抑えやすい |
用途例 | 円筒形中子、ストレート形状 | L字・T字形状、薄肉など、複雑形状の中子 |
サイドブロー方式によるコストメリット

前述の通り、サイドブロー方式は充填不良への注意が必要な反面、金型の構造がシンプルで価格を抑えやすいという特長があります。
トップブロー方式では、上から砂を吹き込むために上型にブロー口を設けたり、排気やエアー抜き用の構造を追加する必要がありますが、サイドブロー方式は横方向から砂を吹き込むため、上型は成形形状を保持するだけでよく、構造を変える必要がありません。
つまり、上型に加工や複雑な構造を追加する手間を省くことができます。
また、トップブローでは、砂を型内に落とすためにブロー口の開閉や押しピン(製品を脱型するための可動部品)を設けることがあり、構造の複雑化や摩耗、メンテナンスの手間につながります。
サイドブローは、型開閉時に重力方向を活かした構造となるため、ピンなどを使わずに脱型可能な場合が多く、機構が単純になります。
金型は中子の製造コストにおいて大きな割合を占める要素です。
トップブロー方式とサイドブロー方式では、金型の製造にかかるコストに倍近くの差が出る場合があり、部品点数が多い中子は必要な金型も増えるため、トータルコストの差は更に大きくなります。
油圧バルブ用の中子など、部品点数が多く、部品の形状も複雑な中子を製造する場合、サイドブロー方式を採用することで大きなコストメリットを出すことができます。
当社では製造する中子に応じてトップブロー方式とサイドブロー方式を使い分けています。
サイドブロー方式で起きやすい充填不良の対策についても豊富な対策ノウハウがあるため、金型の製造コストを抑えつつ、歩留まりのよい生産が可能です。